僕は真面目だけが取り柄の、
ごくごく平凡な大学生だ。
毎日電車に揺られ、
学校に行き、講義を受ける。
講義中、周りを見れば、
しゃべってるやつ
スマホをいじってるやつ。
そして、寝てるやつまでいる。
高い学費を払っているのに
コイツらはどうしてまともに
講義を受けないのだろう。
と僕は常に思っている。
けれどそれを口に出しはしない。
講義が終われば、電車にのって
自宅から最寄りのバイト先に行く。
僕のバイトはブライダル関係。
ウェディングプランナーさ。
結婚するカップルのために、
式に行う催し物を考えるバイトさ。
プランなんて僕には知ったこっちゃない。
内容なんてありきたりの内容で
十分でしょ。
顧客からクレームがこなけりゃ大丈夫。
時間は22時。
仕事が終われば、コンビニに行って
コーヒーを買って、
通い慣れた道を歩きながら飲み、
そして家に帰る。
どこにでもいるようなありきたりな
生活をおくっている。それが僕の人生さ。
正直この世の人間みんなに
うんざりしている。
バイトの奴らもはっきり言って
好きじゃない。
ああしろだのこうしろだの僕の意見を
ねじ曲げようとしてくる。
ことあるごとに、とてもくだらないことで
笑いふさげあったりしている。
僕はそんなことはしない。
真面目が僕の取り柄なのだ。
真面目にやれば、なんでもうまくいく。
文句も言われることもない。
真面目にやってこそ、いい人生なのだ!
周りからみれば、
僕の日常はつまらないものに見えるだろう。
でもそれでもいい。
僕はそんな日常は嫌いじゃない。
とおもっていた。あの日までは...。
4回生になり、就活していた。
真面目に就活していた。
行きたい志望会社の面接をうけ、
特段トラブルもなく終えることができた。
結果はどうかって?もらえて当然だよ。
手応えがあったんだもん。
なぜかって?帰り際に、面接官から
「君は本当に真面目だね」と
いってもらえたのさ。
数日後面接した志望会社から
一通のメールが来た。
件名は面接の結果の連絡。
来たぞ。遂に就活が終わる。
そう思い指先に願いをこめてメールを開くと
次のようなメールが来ていた。
なぜだ。なぜ不合格なんだ。
他の会社も何社か滑り止めで受けたが
結果はダメだった。
どうしてだ...。
面接官は僕に真面目だねと
ほめてくれたじゃないか...。
なのに、内定がもらえない。
億劫になりながらも僕は就職紹介サイトを
開き、就活を続けた。
無情にも月日は過ぎていき、
春が夏に、夏が秋になった。
周りの同級生たちは次々に内定をもらい、
就活レースをあっさりとクリアしていった。
一方、僕はまだ、一社すらもらえてない。
気づけば友人と親からの
プレッシャーに焦りを感じはじめた。
焦る。とても焦った。
しかしまだ内定はもらえない。
そうして冬、12月になって
やっと一つだけもらえた。
本当によかった。
その時は安堵し、心からよろこんだ。
今思えば、この時はまだ、
面接官に言われた一言
「君は本当に真面目だね」の
隠された意味がわかっていなかったのだ。
大学生活が終わろうとした3月上旬に、
あるプロジェクトに参加した。
あのプロジェクトのおかげで
明るい将来が待ってる様な気がするんだ。
そう、僕は変わったんだ!
それにしても貴重で
不思議な体験だったなぁ...。
コンビニでコーヒーを買って家に帰った。
久しぶりにYouTubeで音楽を聞いてよう。
お気に入りのをベリーグッドマン
を聞こうとした。
「Breakthrough
出会おう様々な考え方と
探そう新たな可能性を
切り拓け 自分のこれからを」
と音楽が流れる前にファンタジーシックな
広告が流れた。
なんだこれ。
右下のスキップ欄を押すつもりが、
好奇心にかけられてページを開いた。
次の瞬間には申し込んでいたんだ。
プロジェクトでは、いろんな国に行った。
「ヒトヒトの国」「ゴリゴリの国」
「ウマウマの国」
ほかにもいろんな国があった。
どの国も素晴らしいものがあった。
たくさんの大事なことが学べた気がする。
そのなかでも、「ひょっとこの国」
での出来事が鮮明に覚えている。
この国ではおもしろいことが大好きで、
手ぬぐいを顔に巻き、赤いほっぺに鼻毛。
昭和時代を感じる顔面のひょっとこがいた。
何が始まるのか分からないまま
進んでいった。
しかしどこかで嫌な予感をしていた。
そしてその嫌な予感は的中した。
写真を見てそこから面白いことを
考えて発言する企画。
つまり「大喜利」だった。
僕はこういった類いのゲームは嫌いだ。
何が面白いのだ。失望のため息が出た。
こういうのは、芸人さんがすることだ。
一般人がやっても面白いわけがない。
と思っていた。
お題がでた。クルーたちが一生懸命真面目に
面白いことを考えていた。
やる気の失せた僕は、心のどこかで
クルーたちを馬鹿馬鹿しくおもっていた。
どうやって部屋をでようかな~
と考えていた時に
突然周りが笑いはじめたのだ。
なにが起こったんだ?
どうやら一人のクルーが答えていたようだ。
その答えが面白かったようだ。
なぜかすごく気になった。
いつもなら気にも留めないのに。
しっかり見ていなかった自分を反省した。
いつもの僕なら、
だまってこの部屋をでていたに違いない。
この日は、なにかに引き付けられたんだ。
そしてもう一人のクルーが答えた。
これには悔しいが笑ってしまった。
もちろんみんなも声に出して笑っていた。
なんだか楽しくなってきた。
何人かのクルーがスベっていたが
それはそれで面白かった。
次は、実際にやることになった。
不安でいっぱいだった。
こういうものはやったことがないし、
避けてきた。
1問目はうまいこと浮かばなかった。
要するにスベったのだ。
でもグループのメンバーがうまかったから、
盛り上がった。笑えるってたのしいな。
2問目は必死に考えた。
考えて、ひねりにひねった。
かろうじて思いつくことができた。
自信はない。だけど心して発表してみた。
するとみんなが少し笑ってくれたんだ。
その瞬間風が吹いたように感じた。
今までの僕を払拭してくれたかのように。
人を笑わせることがこんなにも、
気持ちいいことなんて知らなかった。
自分の言動が相手を、周りを
笑顔にできるなんてすばらしいじゃないか。
「ユーモアセンス」を身につけるためには
ただただ、ふさげるのではなくて
「真面目にふざける」ことが大事だ
ということを教えてくれた。
「そうか…。」
あのとき面接官に言われた一言
「君は本当に真面目だね」
の隠された意味に気づいた。
真面目すぎて何の面白みもなく、
魅力がないってことだったんだ。
プロジェクトから帰ってきた。
翌日バイトがあった。
僕はいつものように結婚式のプランを
提供しようとしたとき、
ひょっとこの顔が浮かんだ。
そこからの僕の行動はいつもと違った。
思い切って様々なプランを提供したり
冗談など挟んでやりとりを
することを心掛けた。
すると、いつも以上にお客さんの
笑顔を見ることができたんだ。
あのプロジェクトで僕は変われたんだ。
これから、
「ユーモアセンス」を磨くために
たくさんの笑顔を見るために
たくさん「真面目にふさげて」いく。
スタッフたちの大喜利している様子が
YouTubeで見れるよ!!
ひょっとこをクリックしてみよう!